映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想|そして2人は幸せに暮らしましたとさ

映画感想

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を観てきました。
原作は、2021年に出版されたアメリカのSF作家 アンディ・ウィアー 氏による長編小説です。

原作ファンの中には「物足りない」と感じる声もあるようです。

たしかに、あのボリュームの物語を約3時間の映像に収めるのは簡単ではなく、科学的なエピソードの一部が省略されていると感じる方もいるのかもしれません。

はいほ
ゲノコ

なんてったって上下巻あるからね

それでも、私自身としては映画単体として非常に満足度の高い作品でした。

全体的に明るく軽快で、ところどころにユーモアがあり、テンポよく観られるのが印象的です。
映画『オデッセイ』と同じ原作者だと知って、どこか納得しました。

はいほ
ゲノコ

途中までライアン・ゴズリングがジャガイモを育て始めるのでは……と思ってしまいました

何より魅力的だったのが、異星人ロッキーの存在です。
主人公グレースとのやり取りはどこか温かく、コメディタッチでありながら心に残るものがあり、最後まで楽しく引き込まれました。

あらすじ

主人公グレースが目を覚ますと、そこは宇宙船の中だった。
周囲には2体の乗組員の死体。

彼はたった一人の生存者だった。

記憶を失っていた彼は、断片的に記憶を取り戻していく中で、自分が何者で何のために地球を出たのかを思い出す。

地球は今、未知の微生物によって氷河期に突入しようとしている。
彼はその危機を防ぐために送り込まれた科学者であった。
そんな彼の前に、同じ目的を持つ異星人が現れる。

異星人「ロッキー」もまた、自らの星を滅亡から救うために宇宙へ送り込まれ、仲間を失いながら一人で戦っていた。

言葉も文化もまったく異なる二人。
それでも彼らは協力し、絶望的な状況に立ち向かっていく。

感想

孤独な魂が出会った、真の理解者

はいほ
ゲノコ

重大なネタバレをします

はいほ
ゲノコ

ライアン・ゴズリングは無事です!

主演がライアン・ゴズリングだったので、正直また「広大な宇宙空間で静かに死んでいくラスト」になるのではと、ハラハラしながら観ていました。
ここ最近の出演作では、彼が誰にも知られずに孤独な最期を迎える役が続いていた印象があったからです。

けれど、この作品は違いました。
確かにグレースは地球には帰りません。
人類と隔絶されたという意味では「孤独」な結末とも言えます。

それでも、最後の彼は「孤独」ではありませんでした。
むしろ間違いなくハッピーで、満ち足りていたのが印象的です。

その理由は異星人ロッキーの存在です。

ロッキーは岩のような見た目で数本の肢がついています。
顔も表情もなく、言葉も音というより振動や響きで伝え、視覚ではなく超音波で世界を認識します。

はいほ
ゲノコ

これまでのSF映画に登場したどの宇宙人よりも宇宙人らしいという納得感が個人的にはありました

ロッキーはグレースよりも小さく、どこかユーモラスでとても可愛らしい存在です。
しかし彼の魅力は可愛さだけではありません。
彼はとても柔軟で、包容力のある存在です。そして少しお節介なくらいに踏み込んでくるその距離感が、殻にこもりがちだったグレースの心をこじ開けていきます。

気づけば私はグレースとのやり取りに何度も胸を打たれていました。
「なぜこんな“岩”に感動しているのだろう」と思いながら、それでも鼻の奥が何度もじんと熱くなりました。

グレースは、自分が片道切符の任務で宇宙に送り込まれたこと——つまり“死ぬことが前提のミッション”であることを、どこかで受け入れていました。
しかしロッキーは、それを当然のこととして流しません。

「それではいけない」と向き合わされることで、グレース自身も初めて「本当は嫌だった」という本音に気づきます。

このやり取りに象徴されるように、二人の関係は単なる協力関係を超え、深い信頼で結ばれていきます。
おそらくグレースにとって、ここまで本音で向き合えた存在は他にいなかったのではないでしょうか。

人類への絶望と、再生の地

物語の中盤、グレースが「なぜ自分がこの宇宙船にいるのか」を思い出す場面。

あの瞬間、彼の中で人類への信頼に繋がる扉が、ガシャリと音を立てて閉じたように感じます。
心のシャッターが下りた、そんな決定的な瞬間でした。

それでも彼は、人類を救うために行動を続けます。

それはもはや「義務」や「愛」ではなく、科学者としての誠実さに過ぎなかったと思いました。
もう彼は、どんなに感謝されようと、自分を裏切った人類のもとへ帰ることはないのだと確信させるシーンでした。

宇宙船の中には、地球の風景を映し出す癒しの部屋があります。
砂浜を眺めていると、本来存在しないはずの“人影”が現れました。

はいほ
ゲノコ

違和感ある光景。
あとから考えると予知夢的な??

ラスト。
同じような風景の中を歩いているのは、今度はグレース自身です。
その隣には、ロッキーがいます。

この物語はSFでありながら、本質は「孤独な人間が真の理解者と出会う物語」でした。

言葉も種族も超えて出会った二人が辿り着く結末は、
まるで——

「そして2人は幸せに暮らしましたとさ」

そう言いたくなるような、後味の良いラストでした。

もうひとつの楽しみ方:吹き替え版について

本作の日本語吹き替え版では、グレース役を内田夕夜さん、ロッキー役を花江夏樹さんが担当しています。

はいほ
ゲノコ

内田夕夜さんは本サイト的にはスパナチュのサムでお馴染みですね!

正直、ロッキーの声は自分の中のイメージよりも少し可愛らしい印象でしたが、あの独特な存在に「声」が乗ることで、より親しみやすく、感情移入しやすくなるかもしれません。

吹き替え版ならではの良さも感じられるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

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