8月28日(木)、八王子市へ。
目的は、八王子市夢美術館で開催中の特別展「ますむらひろしの銀河鉄道の夜 完結編」を鑑賞することでした。
本当はもっと早く行きたかったのですが、連日の猛暑で八王子はとくに気温が高く、ずっと迷っていました。
この日は曇りがちで「30℃を下回る」という予報を信じて出発しました。
八王子市夢美術館は、八王子駅から徒歩10分ほど。
ビルの2階にある小規模な美術館ですが、壁面いっぱいにますむらひろし氏の原画が並び、たいへん見応えのある展示でした。
原稿用紙は2枚ごとに額装され、順路に沿って進むと『銀河鉄道の夜』の物語をそのまま追える構成になっています。
(ぜひこちらを聴きながらお読みください)
まず、線の丁寧さと緻密さ、美しさに圧倒されます。
一瞬で通り過ぎてしまいそうな一コマにも、どれほどの時間と集中が注がれているのか――想像するだけで胸が熱くなりました。
制作は「描く」だけではありません。
描く前の準備として、未完で断片も多い宮沢賢治のテキストを整理し、街の地理や銀河鉄道の地図を設定し、カラーチャートも用意して、ようやくラフへ。
そうした積み重ねが画面の説得力になっているのだと感じました。
着彩は中村昭子氏。
解説によると、カラーにするシーンはあらかじめ決め、その意図に合わせてコマ割りをされているそうです。
ますむら氏が本描きした原稿に中村氏が彩色を施すのですが、アナログゆえにマスキングをしての“一発勝負”。
観客はのびやかに楽しませていただくだけですが、作り手側の覚悟と手間は相当なものだと思いました。
中村氏は少女向け漫画やイラストのご出身とのことで、光の表現に70年代少女漫画を思わせるきらめきがあるように感じました。
(こちらの表紙の場合、先に薄い青で下塗り → 彩色 → 仕上げに青を薄く重ねてトーンを整える、という手順とのこと)
ジョバンニとカンパネルラの旅は、映画版とほぼ同じ流れで進みます。
細かな違いとしては座席がボックスではなくロングシートであること、途中で出会う家庭教師と姉弟が猫であることなど。
(ボックスシートからロングシートに描き直したのだそうです)
しかし大きく異なるのは最終盤。
カンパネルラが消え、涙するジョバンニの場面からルートが分岐し、「第三次稿だけに登場する黒い帽子の男」が現れるのです。
私は原作を読んだとき、この要素をやや説明的に感じ、賢治が第四次稿で削ったことや映画で採用されなかったことにも納得していました。
ところが、ますむら氏の原画では、その場面が強いインパクトと叙情をともなって立ち上がり、思わず感動してしまいました。
そこからふたたび映画に近い展開へ戻り、行方不明の原稿1枚のシーンで終幕します。
原画のみか、資料も含まれていたのかは確かめきれませんでしたが、展示された点数は170点。
密度も満足度も高く、ただただ圧倒されるばかりでした。
昼食は、美術館から徒歩10分ほどのラーメン店「麺笑巧真」で。
カウンターのみの小さなお店ですが、おしゃれで清潔、接客も気持ちよかったです。
コクがあるのに後味すっきりのスープと、ジューシーなレアチャーシュー、しっかりした味付けのランチご飯が最高でした!。

帰り道、八王子のユニクロで『攻殻機動隊』のTシャツがワゴンで500円になっているのを発見。
2枚購入して、満ち足りた気分で帰路につきました。
よき一日でした。
(鑑賞中、脳内ではずっと細野晴臣氏の「銀河鉄道の夜」が流れていました)
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