あらすじ
東京大空襲で母を失った眞人は、父の再婚と軍需工場の経営に伴い、地方へ疎開することになる。
眞人の継母となる夏子は、亡き母の妹、すなわち叔母だった。夏子はすでに身ごもっていた。
新しい環境になじめず孤独を抱えた眞人。
ある時、夏子が屋敷を出て姿を消す。夏子を探しに出た眞人は青鷺に導かれ、不思議な異世界へ足を踏み入れた。
感想
あらすじだけだと、少年の冒険映画に分類されそうですが、ちょっと違います。
主人公は小学6年生の眞人です。
この年齢だったら、ここぞとばかりに腕白で元気な男の子に設定しそうだと思いませんか?
ところが眞人には子どもらしい無邪気さや活発さはありません。
代わりに、諦念と落ち着きが備わっています。
多くは語らず、ただ淡々と行動する彼。
愛らしいキャラクターやかわいらしく歌う子役はいません。
あぁ、監督、全開で来たな、というのが私の主な感想です。
今までの宮崎駿監督作品は、明るく楽しいストーリーの背後に、死や喪失など暗い要素を含んでいることが特徴でした。
しかし今回は表面を取り繕わず、不穏な雰囲気や死の匂いなど禍々しい面がむき出しになっています。
異世界に誘う青鷺
若返った老女と人形になった老女たち
死んだ母の少女時代との旅路
大伯父との対話
現実と非現実の境界があいまいになる不思議な描写の連続には、ナレーションやセリフによる説明がほとんどありません。
観客は映像から理解することになるので、見る人の数によって同じだけ多くの考察が生まれるでしょう。
映像と音楽が見事に調和していて、まさに一本のアート作品を味わった満足感がありました。
![はいほ](https://enomoto-illustration.com/wp-content/uploads/2022/05/eno_speak.jpg)
鑑賞中、映像が音楽に合わせているのか、それともその逆なのかを考えてしまうほどでした
蛇足ながら、この映画を見ていて、「銀河鉄道の夜」を思い出したりしてました。
あの映画もシュールで美しい場面と音楽が印象的でした。
「死んだ目をした」主人公が、「すでに死んでいる」相棒と旅をして、人生、死、存在へ向き合う点でも眞人とヒミに共通するなぁと感じたり。
去年から「THE FIRST SLAM DUNK」「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」「君たちはどう生きるか」と日本のアニメ映画を見て、それぞれ表現のアプローチ法は違うものの、クオリティの高さに驚きました。
そして従来の派手な宣伝を用いずとも、ちゃんとヒットをしている点が、なんとも爽快な気分です。
ところで英語版
青鷺の吹替が、ロバート・パティンソンさんですが、いつもの声と違ってて全然わからない!
キャスティングは本人たっての希望だそうですよ。
ヒミは福原かれんさん!瑞々しくてかわいらしいです。
フローレンス・ピューのキリコさんもめちゃくちゃステキ。はまってる!
大伯父のマーク・ハミルはもはやジェダイではって感じですが、他にもインコ大王がバウディスタだったり、ペリカンがウィレム・デフォーだったりととても豪華!
いつか機会があれば英語版でも鑑賞したいと思いました。
![はいほ](https://enomoto-illustration.com/wp-content/uploads/2022/05/eno_happy.jpg)
つかなんかもう実写でも見たいって顔ぶれ
↓かねてから見たいと思っていた英語版ですが
↓アカデミー賞を受賞したことを記念して
↓3月20日から全国のTOHO系の映画館で上映されることが決定!
↓さっそく見に行きました!
「君たちはどう生きるか 英語吹替版(日本語字幕つき)」 感想*3月26日追記*
The Boy and the Heron 見たよー
吹替版の青鷺、コミカルなとこと陰のあるとこのスイッチが見事で、すごかった!キリコさんもかっこよい。英国俳優の底知れなさを味わいました。
老ペリカンの吹替がはまりすぎてて、ペリカンの顔がウィレム・デフォーと重なりました 笑
吹替版、見れてよかった! pic.twitter.com/oAIYHRieIZ— ゲノコ (@guenopon) March 24, 2024
英語版は「The Boy and the Heron」(少年と鷺)とわかりやすいタイトルになっています。
キャストは豪華そのもので、例を挙げると
ヒミ 福原かれん
キリコ フローレンス・ピュー
夏子 ジェンマ・チャン
勝一 クリスチャン・ベール
インコ大王 デイヴ・バウティスタ
老ペリカン ウィレム・デフォー
大伯父 マーク・ハミル
実写でも見てみたいメンツじゃないですか?
結論から言いますと
![はいほ](https://enomoto-illustration.com/wp-content/uploads/2022/05/eno_happy.jpg)
めちゃくちゃよかったーーーーー!!!
ロバート・パティンソンさんが期待以上に素晴らしかった。
コメディ的なイメージの青鷺が
時折見せる悪辣さではすっと陰のある声に変化し
かと思えば次の瞬間にはコミカルなトーンにスイッチする。
まさに変幻自在。
菅田将暉さんの演技に寄せつつも、独自の色を付けて
オリジナルを超えてきてるという印象でした。
今までの映画で見てきたロバート・パティンソンさんとはまったく違う。
一体どんな表情で青鷺を演じていたのかと思ってしまうほどの怪演でした。
![はいほ](https://enomoto-illustration.com/wp-content/uploads/2022/05/eno_speak.jpg)
自ら青鷺を演じたいと申し出たらしいですよ
そしてフローレンス・ピューさんのキリコ。
演じ分けの巧みさと貫禄がすばらしく
実にかっこいいキリコでした。
![はいほ](https://enomoto-illustration.com/wp-content/uploads/2022/05/eno_speak.jpg)
そういえば私は英語版で初めて、久子が行方不明になったとき
キリコも一緒に消えていたことに気が付きました。
あの世界に二人のキリコが存在していたわけですね
あと、絶対はまり役だと思ったウィレム・デフォーさんの老ペンギンは
期待通りでした。笑
悲し気に語る顔がもうウィレム・デフォーさんにしか見えなくなって
ちょっと笑ってしまいました。
クリスチャン・ベールさんの勝一は日本語版より円熟した大人の雰囲気があり、
木村拓哉さんの少年っぽさを残した父親像とまた違いましたがそれもステキ。
ちなみに字幕は日本語版の台本を使用していました。
ですので英語版キャストの演技とともに、
日本語と英語の表現の差も楽しむことができます。
![はいほ](https://enomoto-illustration.com/wp-content/uploads/2022/05/eno_kusyo.jpg)
日本語では聞き取れてなかったセリフを
英語版を見て字幕で知るという
キャストの豪華さだけでなく、
演技や言語の表現の違いを通じて、
さらに深く作品を味わうことができるでしょう。
英語版も見る価値ありです!
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